以下、写真右端から解説。
1) 『聖福音経』日本正教会 1905
早課,聖体礼儀およびその他の聖機密において,主教、司祭,輔祭により誦読される祈祷書である。四つの福音書のそれぞれが「端」と呼ばれる単位に分けられ誦読の範囲を示し,また通例の章,節分けもなされている。付録として,毎日の奉神礼で誦読される箇所の指定と索引があり,聖暦(聖人名のリスト)がある。金銀など金属の表紙によって装飾され、奉神礼においては宝座に安置される。奉神礼の小聖入においては司祭,輔祭によって棒出(高く掲げて持ち出)され、キリストのエルサレム入城とその後の宣教を象る。
2) 『聖使徒経』日本正教会 1905
聖体礼儀およびその他の聖機密において司祭、輔祭、副輔祭、誦経者により誦読される祈祷書。新約聖書のうち,四つの福音書とヨハネの黙示録を除いた部分、すなわち「聖使徒行実(使徒行伝)」と書札(書簡)がまとめられて,『聖福音経』と同じように、通し番号で端が指定されている。
3) 『聖詠経』日本正教会 1901 (1988再刊)
旧約聖書のダヴィデの「詩篇」を正教会では「聖詠」とよぶ。百五十章を二十のグループに分け,それをカフィズマ(坐誦経)と呼んで,その単位で祈祷書の中で誦読が指定される。章分けについては七十人訳旧約聖書をもとにしているので一部異なり、一般の「詩篇」と対応させる時は注意が必要となる。
4)『時課経』日本正教会 1884 (1998再刊)
日々の奉神礼の祈祷文,夜半課(平日・主日),早課,第一時課,第三時課,第六時課,聖体礼儀代式(ティピカ),第九時課,晩課,晩堂大課,晩堂小課,そして『八調経』から抜粋された復活トロパリ,コンダク,生神女讃詞などがおさめられている。奉神礼においておもに誦経者が用いるもの。
5) 『イルモロギイ 連接歌集』
イルモス(連接歌)など、基本となる祈祷書に挿入される歌頌が集成された祈祷書。
6) 『聖事経』日本正教会 1895 (1993再刊)
生産(誕生)の祝文,洗礼機密,傳膏機密,婚配機密,聖傳機密,埋葬式,聖水式などと,家屋や井戸の成聖など生活成聖のための様々な祈祷文がまとめられている。
7) 『奉事経』日本正教会 1895 (1993再刊)
徹夜祷,聖体礼儀等において神父,輔祭により誦読される祈祷文をまとめた祈祷書。晩課,早課,奉献礼儀,金口イオアン聖体礼儀,聖大ワシリイ聖体礼儀,先備聖体礼儀等や領聖感謝祝文など。
8) 『オクトイホ 八調経』日本正教会 1909年 卷の一、『オクトイホ 八調経』日本正教会 1909年 卷の二
正教会暦では聖五旬祭が終わり,次の主日を「聖五旬祭後第一主日」とし,以後「第二主日」〜と順次数えて,翌年の二月には大斎をひかえた「税吏とファリセイの主日」に至る。その間の毎日の祈祷文が,一調から八調に分けて全二巻にまとめられている。実際の奉神礼においては,その日の調にあわせて主日前晩祷(徹夜祷)の,おもに晩課と早課において用いられる。主日聖体礼儀では第三時課,第六時課において誦するトロパリ(讚歌)、コンダク(讃頌)などもこの祈祷書にある。
9) 『Anthologion 祭日経』日本正教会 1910
正教会には月毎にキリストや生神女マリアをはじめ,諸聖人の祭日などの祈祷文をまとめた『月課経』という祈祷書があるが,日本正教会ではその全訳はなく,祈祷をおこなう項目を中心として『祭日経』として抜粋されてまとめられている。おもなものは降誕祭,神現祭,迎接祭,生神女福音祭,ペテロ(ペトル)およびパウロ(パウェル)祭,顕栄祭,生神女就寝祭,洗礼者(前駆授洗)ヨハネ(イオアン)斬首祭,生神女誕生祭,十字架挙栄祭,生神女庇護祭,ミラリキアの聖ニコライ祭など。
10) 『トリオディ 三歌斎経』日本正教会 1911
パスハの喜びを本当の喜びとして成就させるために正教徒は大斎においてその準備の期間にはいる。この祈祷書には正教徒のパスハに向け,キリストの受難を思いおこす日々の祈りが凝縮されている。税吏とパリサイ(ファリセイ)の主日,蕩子(放蕩息子)の主日,断肉の主日,乾酪週間と乾酪週間の主日,そしていよいよ大斎にはいる。大斎第一週間祈祷の月〜木曜日と第五週間の木曜日に詠まれる痛悔の祈りアンドレアス(アンドレイ)のカノンもここにある。さらに五週間スボタ(土曜日)の生神女のアカフィスト,ラザロ(ラザリ)のスボタ,聖枝祭主日,そして受難週間にはいり,復活祭前の夜半課に至るまでの祈祷文や奉神礼執行のための注意事項がまとめられている。
11) 『大斎第一週間奉事式略』
『トリオディ 三歌斎経』のうちの大斎第一週間の祈祷文のみが掲載された祈祷書。
12) 『受難週間奉事式略』
『トリオディ 三歌斎経』のうちの受難週間の祈祷文のみが掲載された祈祷書。
13) 『ペンティコスタリヲン 五旬経略』日本正教会 1903
パスハから聖五旬祭(ペンテコステ)に向けておよそ八週間にわたる期間の祈祷文がまとめられている。「三歌花経」(花の三歌経)ともよばれ,聖大パスハ主日の早課から光明週間,聖使徒フォマの主日,聖携香女の主日,癰者(なんしゃ)の主日,五旬中節の水曜日,サマリア婦の主日,瞽者(こしゃ)の主日,主の昇天祭,諸聖神父の主日,聖五旬祭(聖神降祭)主日,衆聖人の主日までの祈祷文が収められ,パスハの喜びと主の復活と昇天そして聖神の降臨までの期間の祈祷文が収録されている。